門前払い

出所不明

「門前払い判決」は、議論にも応用ができます。議論したくないときや、議論する価値がないと思ったときに利用することができるのです。相手に議論をしかけられたとき、「この議論は、実質的な議論に入るための要件を備えているか。」を問題にするのです。裁判がこうですから、弁護士は、仕事柄、自然とこういう思考方法になる傾向にあります。
■具体例

次のような例を見てみましょう。

「私は社内で男女を平等に扱うべきだと思う。あなたは女性に差別的待遇をしている。この点をどう考えるか。」誰かがこのように発言したとします。

これに対して、こう答えてみましょう。

「あなたは、そのようなことを論ずる資格はない。なぜなら、あなたは、第1に、社内で社員を呼ぶときに、男性には「・・・さん」と呼びかけ、女性には「・・ちゃん」と呼びかけており、男女の差別をしている。第2に、男性にお茶を入れさせることはないが、女性にはお茶を入れるように要求しており、男女の差別をしている。第3に、男女の社員数は同数であるのに、数人でチームを組んで行うような重要案件では、女性をほとんどチームに参加させておらず、男性社員ばかりで案件を進めようとしており、男女の差別を行っている。議論する前にあなたはなぜそのような男女差別をしていながら、男女平等を主張するのか、この矛盾点を説明してもらいたい。」

これに対して相手はこう答えるとしましょう。

「今は職場環境をどうすべきかを問題としており、私の問題を議論しているのではない。」

これに対しては、こう追い込んでみましょう。(説明のために少し長めにしてあります。口頭での議論の際には、もっと手短になるでしょう。)

「言うまでもなく信念は論理的一貫性が要請され、矛盾は許されない。しかし、上記のようなあなたの態度は、男女平等とは矛盾する態度であり、あなたは男女平等を主張する資格がない。今、あなたが男女平等を主張するのであれば、先にあげた点について、次のいずれかを論証しなければならない。

(1)先にあげた例は、男女差別にはあたらない。なぜなら・・・
(2)先にあげた例は、男女差別にあたるが、私はすでに改めている。それまでの私の態度は男女を不平等に扱っていた。不平等に扱った理由は・・・・であり、考えを改めた理由は・・・である。
(3)先にあげた例は、男女差別にあたる。しかし、これから改めようと思う。これまで私が男女を不平等に扱った理由は・・・であり、考えを改めた理由は・・・・である。

あなたが上記のいずれかを論証し、それが説得力を持たない限り、あなたは、男女平等を主張する資格がない。したがって、私はあなたの男女平等論について、質問に答える必要はない。」
完全な門前払いです。簡単に言うと、「そういうあんたはどうなんだ。」ということであり、「議論の内容」そのものを吟味するのではなく、「議論する資格」自体を問題にするのです。議論したくない事項について議論をしかけられた場合には、このように、議論の内容に立ち入ることなく議論を打ち切る方法もあることを覚えておきましょう。

逆にこのような門前払いを食らわせられないためには、自分自身が論理的に一貫した信念を持ち、矛盾のない統一的な生き方をしなければなりません。自分の生き方そのものが問われるということです。議論とは、きわめて論理的なものですが、論理性は普段の思考や態度、生き方にも要求されるということです。

上記で、仮に相手が(1)から(3)のいずれかを論証してきた場合には、今度はその理由を遡り、「その理由からすると、こうなるが、おかしいのではないか。」とか、「そう考えたのはなぜか。」等と追求していけば、相手ばかりが理由の説明をしなければならず、こちらは質問だけしておけば良いこととなり、最後まで自分の主張と理由を説明する必要はなくなります。

また改めて説明しますが、議論においては、質問する側が圧倒的に有利であることを覚えておきましょう。

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